３．いつになったら動くんだよ〜！？
乗り込んだ列車はロングシートだったが、幸いなことに往きの電車ほどは
混んでいなかった。ドアの横の席を見つけ、４人で通路を隔てて
向かい合って座る。
そこはちょうど電車の台車のうえに位置していたが、そのときは
そんなことは気に留めもしていなかった。
それにしても、電車に乗るとなんでこんなに眠くなるんだろう。
ベッドの中で寝つけないことはあっても、
走る電車に座って眠れないことはまずない。
朝が早かったこともあって、私はたちまち意識を失っていった。
突如、右肩から右腕にかけて異物感を感じ、私は目を覚ました。
見ると、そこにはまるでカバのようなオバハンの尻があった。
私は慌てて、ラインサイドで守備をする暢久のように、
右肩を上げてその尻を振り払った。
そして、オバハンに睨みを入れると、オバハンはゴメンも言わず
そそくさと去ってしまった。
電車は手稲を過ぎると快速運転になる。
その手稲でどっと人が乗ってきて立ち客も目立つようになってきた。
でも、札幌までは琴似のみ１駅の停車だけ、もうすぐそこだ。
まだ４時前だし、どっかお茶飲めるとこあるかな〜？
琴似ではコンサのユニを着た子供が乗り込んできた。
琴似を発車した電車は高架を快調に走る。
さて、そろそろ札幌か？
「ピィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！」
北海道の列車は走行中よく警笛を鳴らす。
往きの快速エアポートもそうだった。この列車もここまで幾度となく
鳴らしていた。きっと、冬は雪で視界が悪くなるからだろう。
「ピィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！」
それにしても随分長いな？
「キィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！」
今度は急制動がかかった。 あれ？ あれどうしたんだ？
「がっくん！」
我々を乗せた電車は、駅でもないところで急停車してしまったのである。
そしてすぐ車内放送が流れる。
「ただいまこの列車は人身事故を起こしました。」
え？ マジ？ 勘弁してちょうだい。
だいたい高架を走ってて踏み切りもないはずなのに、なんで人身事故を
起こせるんだよ〜？
でも窓の外を見ると、保線用と思われる高架への通路があった。
すぐそばの窓際に座っていた乗客が一言
「サンダルが落ちてる・・・。」
げげげげげ、おいおい冗談だろ〜〜〜〜〜。
それからは、ＪＲの職員だの警察だの救急だの、制服を着た男たちが
やたら窓の外を行き交う。
しかも、ちょうど我々が座っているあたりの下で・・・。
私はずっと極力窓の外を見ないように努力をした・・・。
そんななか、埼玉にいるＳＳ総裁から、はるばる携帯に電話が入った。
「いかがですか？ ドームは？」
いやあ、まだ着いてないんですよ〜。
でも、他会場の経過を詳しくお伺いでき、随分気が紛れました。
ＳＳさん、どうもありがとうございました。
電車は結局そこで７５分停車した。
まるで、倒れたビスマルクが起き上がるのを待つ心境であった。
札幌を目の前にしながら、痛恨のタイムロスである。
もう５時を過ぎていた。お茶を飲んでいる時間はない。
しかし、冷静に考えれば、これより後の電車に乗っていれば、
お茶どころかキックオフにも間に合わなかったかもしれぬ。
やっぱり、指定席にして正解であった、その時もまたそう思った。
でも、でも・・・、
コンサドールズの登場には間に合うだろうか？
我々はそこからわずか３分で到着した札幌駅にそそくさと降り立った。
これが噂のドーレ君柄
のチケットだ
（指定席）
４．やっぱりここは札幌、アウェイだ−！
大慌てでホテルに荷物を置き、地下鉄の駅に走る。
豊水すすきの駅で乗り込んだ電車は赤と黒を着た人で満員であった。
一瞬仲間かと錯覚したが、皆胸に「サッポロビール」の文字。
ああ、やはりここはアウェイ、札幌ぢゃ〜。
終点の福住という駅まで乗って、そこからドームまでは徒歩１０分。
その道すがら、にせどさんこのＳちゃんと合流する。
彼女は、それなりにスポーツとかを観るのは好きだそうだか、
サッカーの生観戦は初めてだそうだ。
１号が、知っている選手は？と聞いたところ
「バンバン、ノノ、ウィル、エメルソン
（う〜む、外人ばっかりだ）
えっ井原っていま浦和にいるんですか」
とのこと。因みに最近までエメルソンが浦和に移籍したのも
知らなかったそうだ。
ドームはさすがに広かった。
なにしろ、暗くて入り口がどこだかわからなかったため、
延々と周りをほぼ１周させられたもんね。
遠方からの客に、ゆっくりとドームを見せてやろうという
主催者の配慮が感じられた（いらいら）。
ワールドカップのときはさぞや外国の特殊なお客様たちにも喜ばれる
ことだろう（わくわく）。
入口で俺王の表紙の無料マッチデーをもらい、指定席にたどり着く。
正直なところ、野球との共用とのことで、観やすさにはあまり期待して
いなかったが、かなり上の方の席だったこともあってか、なかなか
見晴らしがよくて観やすそうだ。やはり指定席にして良かった、
まだそのときはそう思っていた。
そしていよいよ我がチームの選手がピッチに上がる階段を上がってきた。
ん？ 何だか周りの雰囲気が変？？？
そしてピッチに姿を現した選手に向かって
猛烈なブーイングが浴びせられた。
もちろん、我々の周りのほぼ全員がブーイングをしている・・・。
あっ、やばっ。そのとき私は初めて自分たちが
太平洋に浮かぶ沖ノ鳥島のような状態に
置かれていることに気がついた。
仲間たちは遥か遠くアウェイのゴール裏にぎっしりと固まっていた。
Ｐａｒａｐａ＿Ｌｏｖｅ（そんなばかな 参照）よりもずっとやる気の感じられる
コンサドールズの踊りを観たあと、いよいよキックオフ。
いつもは１号から、あんたの応援は「うるさい」だの「下品」だの「恥ずかしい」だの
「教育上よくない」だの言われている私ですら、
いつもの調子で騒ぐのははばかられる。
前半はその状態をなんとか我慢したが、ついに耐え切れなくなった後半は
Ｔ君を誘って「ドームの出島」へ移動したのだった。
ところで、試合中うちの選手
が倒され、あ、この俺王め、
やりやがったな！
と思ってよく見たらそれは
頭を剃り上げた野々村だった。
なんでも、今日が欠場明け。怪我で欠場している間に剃ったそうだ。
そういえば、これは後日談になるが、日本代表の
イタリア戦をＴＶ観戦していたときのこと。
小野伸二命の１号が「きゃ〜シンジ〜」と叫んでよく見たら
戸田だった。
彼女はしばらくの間立ち直れなかった・・・。
試合内容の詳細は別コーナーを見ていただくとして、ともかく
たっぷり１２０分をかけて札幌はＪ1残留を決めたのだった。
（今度こそ後編へ続く）
「今度こそ」とか書いているが、後編その２とか、後編の上とか、
後編エボリューションターボタイプＤ
とかあるんじゃないだろうな？
待て次号！