超零細浦和系サイト　ＳＳＲＳ　老母で実験　ヨコハマたそがれ

えー、大きな声では言いにくいのですが、ワタシは埼玉より圧倒的に横浜の方が好きです。

横浜は、坂が多くて、住宅地の道が狭く、駐車場も少ないという欠点はありますが、育った場所でもあり、港があり、気候も温暖。実家の最寄駅から東横線に5分も乗れば横浜駅に着きます。車で出かける場合の不便さを除けば、何も不自由なことはありません。

中華街にはうまいものがあるし、元町にはおしゃれな店がある。
あれがあなたの好きな場所である港の見える丘公園からは、街の明かりがとてもきれいだし。
たそがれたら、伊勢佐木町でため息をつくもよし。
それに何と言っても、横浜には「有○堂」があるんであります。
埼玉の本屋って本当に品揃えが悪くてね・・・。
ホント、横浜大好き。

しかーし、Ｊリーグについて言えば、
圧倒的に横浜の方が嫌いです。
これだけはもう、どうにもなりません。

その、横浜Ｆマリノスvs浦和レッドダイヤモンズの試合が、悪名高き横酷で開催される日が近づいてきました。

実は、ワタシの実家は新横浜からも地下鉄で一駅なんであります。
今回はせっかくなので、ミーハーな妹を観戦に誘ってみました。
彼女は、宮本やゴン中山が見たいなどというアフォではございますが、過去２回レッズ戦を神奈川県内で観戦しており、いずれもレッズが勝ったので、我々の間では、縁起物ということになってます。
ところが、生憎当日は都合が悪いなどというのです。

その時、ふと思いつきました。

そうだ、ばぁさんを連れて行ってみるか。

ばぁさんとは、祖母ではなく、ワタシの老母でありますが、どこから見ても１００％立派なばぁさんなので、ワタシと妹は「ばぁさん」と呼んでいます。

リーグ戦も中断期間に入る季節。
サッカーを生観戦したことがない老母から繰り出される発言はおそらく格好のネタになるに違いない。
ワタシはなんと、老母を横酷まで連れてゆくことにしてしまったのであります。
きっと、彼女はそんなこととは知らず、去年ワールドカップで盛り上がった競技場に連れて行ってくれるものと喜んでいたのでしょう。親不孝も極まれリというものです。

老母は、横浜に住みながらも、埼玉の方が圧倒的に好きなんだそうです。
何となれば、埼玉の出身であるからです。

彼女は昔から何かというと埼玉贔屓でした。
高校野球の季節には、埼玉のチームをチェックしていました。
埼玉といえば、ダサい、としか思っていなかった子供時代のワタシは、親の田舎が埼玉であり本籍地も埼玉であったのが、どうしても気に入らなかったのですが、因果応報・・・・。
今では、あれほどダサいとヴァカにしていた埼玉に住むことになり、挙句の果てはレッズ至上主義と化してしまったのであります。

老母に、
「今回は、勿論　浦和を応援するんだよね？」
と念のため確認してみました。

するとどうでしょう。

『知ってる選手がいるわけでもないし、どっちが勝ってもいいのよ』

などと気の抜けた返事が返ってきました。
埼玉至上主義の老母にあるまじき発言に、些か驚いたものの、とりあえずは横酷まで、一緒に出かけたのであります。

にゃんた２号は、とっくに横酷に出かけてしまっていました。
彼の場合、アウェイでは密かにゴール裏に行き、熱いサポの皆さんと一緒に大声を出すのを楽しみにしています。
しかし、まさか老母を２階で飛び跳ねさせてうっかり成仏させるわけには行かないので、１階に我々の席を確保しておいて欲しいと頼んでおきました。

横酷までの道すがら、横浜Ｆマリノスの岡田監督は元日本代表監督であり、浦和レッズのオフト監督も元日本代表監督だということを、説明してみました。
すると、

『岡田監督もオフト監督も知ってるわよ。今は横浜と浦和の監督をやっているのね？』

などと意外な言葉が返ってきました。
老母といえども、代表戦くらいは見ていたようです。

『小野くんは今もオランダにいるの？』

・・・・ああ、伸二という選手を知っていることもビックリなら、
オランダにいることを知っているのにもビックリ。

唯一の救いは、

『岡野はどうしているの？』

という発言くらいです。
つーか、全然救いじゃない。岡野は神戸に移籍して、先日の神戸戦では・・・（以下省略。）

老母の発言には何の期待もできなさそうなことに気がつき、ワタシはおとなしくスタジアムの席に座りました。横酷でも、なんとか選手が判別できる１階のバックスタンドです。

横浜の選手も浦和の選手もよく知らない老母ですが、『ちょっと望遠鏡を貸して』・・・・・（望遠鏡って？）
と言ってオペラグラスを取ると、なにやらメインスタンドの方向を見始めました。

『ああ、あれがオフト監督で、むこうが岡田監督ね』

・・・・ううう。そんなもの、わざわざオペグラで確認しなくても・・。

こうなると、残る問題はレッズがショボい試合をしないかどうかです。
『あなたが応援しているチームって、弱いわね！』
などと言われたら、もう目も当てられません。

ところが、これまた意外なことに、今日のレッズはそれほどショボくありません。
”優勝を狙えるチームで監督がやりたかった”などと、札幌のサポが可哀想過ぎるような暴言を吐く岡田武史率いる横浜ですが、今日はあまり迫力を感じません。
平川を壊したドゥトラが出場停止である以外は、一応そこそこのメンバーなはずだと思うのですけどね。

結局レッズは何度も惜しいチャンスを逃して前半を終わりましたが、ここ数試合のへたれっぷりと比べれば出来がよい方だと思われました。
途中、今日もいまひとつピリッとしない永井くんがオフサイドにひっかかったりしてましたが、
老母は、

『今のはオフサイドね』

などというのです。

えっと・・・。今何か言いましたかね？

もしかして、オフサイド！？

・・・・何と、老母はオフサイドを知っていました。

これが、バレーボールにおけるフェイントを『ペイント』だと思っていた老母でしょうか。

生観戦での奇想天外な発言を期待していたワタシとしては、早くも目論みが崩れ去ったことを認めざるを得ませんでした。

ハーフタイムもそろそろ終わると思われる頃、老母は急に

『やっぱり暑いから飲み物を買ってくるわ』

などと言い出しました。
基本的に、売店・トイレなどの大混雑が大嫌いなワタシは、ハーフタイムには席を動かずじっとしているのを常としております。
もうじき後半が始まるというのに何を言い出すのかボケ！
などと舌打ちしたい気分でしたが、聞く耳をもたない老母はすたすたとゲートに消えてゆきました。

程なく後半が始まり、さらに１０分が経過しましたが、老母は戻って来ません。
全く、せっかく試合を見に来たのに何をやっているんだか、この間にゴールが決まったら、全然意味がないのに・・・。
と、イライラし始めたころ、ようやくコーラを２本かかえた老母が戻ってきました。

『そろそろ売店がすいているかと思って行ったんだけど、全然すいてなかったのよ』

お陰さまで、世の中には、試合を見ないで売店に並んでいる人が多いんだということを知りました。

ネタ作りのための老母を伴っての観戦は、こうしてほぼ１００％失敗に終わりました。

まぁ、彼女もそれなりにスタジアムの雰囲気を楽しんでいたようだし、
そして何よりもレッズが勝ったし、今回はこれでよしとしておきましょう。

ああ、ホントつまらなくてごめんなさい・・・・。