むかしむかし、あるところに、足の速い柴犬※１がおりました。
この柴犬は、足は速いものの、獲物をとるときに失敗を繰り返し、
飼い主に怒られてばかりいました。

特にひどかったのは、東北地方※２に行ったときのことです。
あと１匹獲物を捕まえればその日の仕事は終わりというときに、
３回も続けて獲物を逃してしまいました。※３

失敗を何度も繰り返したその犬は、飼い主にいまいち好かれていないことに
気づき、自分から大阪の新しい飼い主※４にもらわれて行きました。

ところが、新しい飼い主のもとでもやっぱり失敗ばかり。
今度はその飼い主を大変不幸な修行の旅に出すことにになってしまいました。
　新しい飼い主は、前の年にスペインにもらわれていった（当時は）優秀だった※５
犬のことを思い、嘆き悲しんだということです。

でも、柴犬にもひとつだけ得意なことがあります。

それは、前の飼い主を困らせることです。

　春先、前の飼い主の所に戻ったときには２回、秋になって前の飼い主が新しい飼い主のところに
来たときにも１回、前の飼い主に噛み付いたのです！
しかもこの時には、死んだふりまでして前の飼い主を卒倒させました。※６

前の飼い主からは、『よけい嫌いになった』と言われ、
新しい飼い主からは『前の飼い主に噛み付くことしかできねーじゃねーか』※７と言われ、
ますます評判を落としているのにもかかわらず、
当の柴犬は得意満面です。

でも幸いなことに、前の飼い主はこの柴犬を新しい飼い主からお金をもらって完全に
売払ってしまっているため、もう前の飼い主の所に帰ってくることはありません。
しかも、この柴犬、来年は新しい飼い主とともに修行の旅に出なければならないのです。※８

前の飼い主は、暫くその柴犬を見ることすらしなくてすみそうです。

これが、前の飼い主にとっては最大の恩返しといえるでしょう。

めでたし、めでたし。

【脚注】
※１　暗喩。もともとはさいたま市にある人気サッカーチームの選手だったと考えられる。現在関西にいるＯ柴またはＯカ野のことか。

※２　東北地方に１部リーグのチームができたのはつい最近のことなので、２部リーグの試合を意味している。人気サッカーチームが何故２部リーグにいたのかは謎だが、２部に落ちた直後、間違って喜んでしまった選手がいたとの怪記録もある。

※３　Ｖゴール方式延長戦の比喩と考えられる。先に点をとった方が勝ち。

※４　大阪とあるため、やはりＯ柴説が有力。

※５　スペインに移籍した選手はホー、西澤。「当時は優秀だった」とあるので西澤のこと。

※６　ペナルティエリア内で相手をファウルで止めたりすると、ペナルティキックをとられる。逆に、ペナルティキック狙いでわざと倒れたりするとダイビングといってイエローカードをもらったりすることもある。ここでの死んだふりとは、明らかにダイビングのことだが、実際にはペナルティキックをとられてしまったようだ。

※７　確証はないが、Ｏ柴の得点の約１／３は、前所属チームからもぎとったものとの噂である。

※８　信じ難いことだが、この大阪のチームは最近ダントツで２部落ちしてしまった。だが、スペイン・イギリスを放浪してきた当時は優秀だった西澤がもどり、日本代表の森島、韓国代表の尹など２部リーグでは反則ともいえる選手をそろえ、１年での巻き返しを図っているらしい。っつーか、Ｏ柴、レギュラー確保できるのか！？子供と奥さんと義理のお父様のためにも頑張って欲しいものだ。